与えていないから、奪われたように感じる

ー 「幸福の代用品」を捨てると、幸福が手に入る

Giver

午後のカウンセリングルーム。

ドアをあけて席に座ると、先生はおもむろにボイスレコーダーの再生ボタンを押した。
スピーカーから流れてきたのは、なんと僕の声だった。

「まぁ感謝されてないし、テキトーにやることにしていますよ」
カチッ。
「そこまでやってあげることはありません。だってこの給料・この待遇でしてあげられる仕事はここまでですから」
カチッ。
「あの人たちは家族じゃない。いうなれば他人ですし、そこまで突っ込んで助けることはないですね」
カチッ。

先生は、停止ボタンを押して半笑いでこっちを見た。

「何ですか、これは? 僕が以前のカウンセリングで言ったネガティブワードのコレクションじゃないですか」
おもんないわ〜。失礼やわ〜。

「僕だってポジティブなこともいうのに、こんな風にネガティブワードだけ抜粋されて突き出されるのは、承伏いたしかねます。」
なんやねん、こいつぅ。

どうしてそんなに、奪われたように感じるんですか?

先生は、半笑いのまま聞いてきた。
「何であなたはいつも、そんなに奪われたように感じて怒っているんですか?」

だって、現に俺は奪われているよ。
安月給でいいように使われているし、都合のいい時ばかり利用されるし、時間も待たされるし、感謝やねぎらいの言葉ももらった記憶がない。金持ちの家にも生まれなかったし、幼い頃から、褒められもせず寂しかったんだモン!

というようなことを言おうと思ったけれど、先生の思うツボようだったからやめた。

「しかも奪われるだけでじゃなくて、やっかんで、奪おうとしたりしていませんか?」

「いや、それは流石にしていませんよ、そこまで落ちぶれてませんから、アハハ」

と即答したが、本当はしている。
失礼なことされたら失礼なことするし、いっぱい貰っているの人の足は思いっきりひっぱりたいと思っているし、報酬が少なければ提供するものも少なくするし。やられたらやり返す、倍返しする。落ちぶれてすまん。

「与えていないから、奪われたように感じる」法則

「あなたが人生のあらゆることに『ちゃんと貰えてない!奪われている!』と怒っているのは、与えていないからです」

先生は「今良い事言いました」みたいな顔をしたが、そりゃそうだろ、と思った。

「当たり前じゃないですか。貰っていないから、与えない。だってそうしないと、損しちゃうじゃん?」
立場の強いものがリードして先に与える。これが筋ってもんちゃうんか?

「わかりました。では、あなたの言う損とは何でしょう?

「いやあ、めっちゃ損してますよ!」
えっと例えば……、あれ? ちょっとタイム。そういえば、具体的に何を損したと思っているんだ、オレは?

「何ですか?」

「うーんと、時間とかエネルギーとか…」
言いながら、なんだかシックリこない…。

違うと思ってるでしょ自分で。違うんですよ。ただ、スネて対抗しているだけです」
そうなんですか、ハイ、そうなんですよ。

全身全霊を与えた時のことを、覚えていますか?

「ふふふ、失礼しました。おふざけはここまでにしましょう。私もあなたが、ヒドイ人間だとは思っていませんよ。むしろ、根が純粋で真っ直ぐな人間だと尊敬してます。きっと本当は、全身全霊で与えたいと思っているんです。

「はい…、そうなんです。」
わかってくれるんですね。やっぱ先生だ。情熱的に生きたいさ、オレだって。心に燃えたぎるマグマはある。だけど注ぐ場所がない。

「全身全霊で与えた時、どう思いましたか?」

そんな経験は人生に何度もあるものではなかったけれど、何回かあった。
その時は、本当に没頭して時間が経過するのも忘れ、人と話すのも刺激的で、なんというか打てば響く感じだった。いい感じにハイで、キラキラしてた。やっている途中は夢中で、終わった後に振り返ると、楽しい時間だったと思えた。人に価値をもらい、必要とされた。

「充実してましたね、幸せでした」
「それは何かの見返りとしてやったものですか?」
「いえ、違います」
「では損はしましたか?」
「してません、全く」

先生は、一息ついて言った。
「与えることでしか、受け取れないんです」

「充実感の代用品」を捨てると、「幸福」が手に入る

そうだよな。「充実感」は自分から動いた時にしか湧いてこない。
頭と心のなかに、思い出が駆けめぐる。

「充実感の代用品」として貰おうとしていたお金、感謝の言葉、地位、有名度、時間は、すべて間接的なものだ。それが奪われただの損しただのと騒いで人から奪おうとするのは、よくないね。私は乞食でした、反省。

「充実感の代用品」を損すること。これが「充実感」を得ることにつながる。
ボクの小さな頭で「損」だと思っていたことを行うのが「得」なのね。損すれば、得する。

先生はトドメをさした。
「幸福感や成功感というのは、周囲の人と充実感を分かち合っている心理状態のことを言うんです。なので、乞うのではなく、与えよ。それよく吟味して、明日から行動してみてください」

オッケー、I got it 。
まずは、損したろうじゃないの。明日から、特別出血大サービスだ!

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